いきなりですけど、映画『桐島、部活やめるってよ』のレビューです。
- 出版社/メーカー: バップ
- 発売日: 2013/02/15
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あらすじ
まず、誰かに「面白いから見てみなよ!」って薦める映画でもないです。むしろ、「何これ。意味わかんない」っていう人の方が多いかもしれないけど、個人的には、これが意味わかんないっていう人とはたぶんあんまり深い仲にはなれないかなぁっていう、そんな映画でした。
ネタバレ的なことはほとんど書きませんが、ざっくりとしたあらすじはタイトルのまんまで、桐島っていう、スポーツも勉強もできて、女の子にもモテる学校のスターみたいな高校生が部活をやめて学校にも来なくなって周りが騒ぐ、それだけの話です。それ以外になにか大きな事件が起きるわけでもなく、ただ淡々と登場人物の高校生たちのそれぞれの視点で高校生活の日常が描かれてるだけです。ちなみに桐島はこの映画に一切出てきません。そういう意味で謎の男というか雲の上の存在、みたいな扱いになってます。
高校生は本音を言葉にしない
なんで意味がわかんないのかっていうと、登場人物が自分の本当の気持ちをほとんど話さないからです。ナレーションの補足もない。見てる人は、ただの日常の会話や表情から登場人物たちの心理を推測するしかなくって、普段の生活の中でそれができない人はたぶんこの映画の意味がわからない。
普通の高校生は自分の本当の気持ちや自分の深いところに閉まっている感情を友人に話したりしません。10代の後半なんて、大抵の人は本当は漠然とした将来への不安だったり、毎日繰り返す生活の無意味さや虚しさみたいなものを一番抱える時期だと思うんですけど、親友にすらそんな気持ちを打ち明けて話すことってない気がするんですよね。安っぽいドラマなら平気で口にするような自分語りも、「なに語っちゃってんの(笑)」と一蹴されるのが高校生のリアルじゃないですか。だから若者は表面的な薄っぺらい会話しかしないし、恋人にも本当の自分を隠す。
そういった意味で、この映画は徹底的にリアルに描いていて、だから共感できる。
「プロになるわけでもないのに部活に打ち込んでどうする」
「女にモテて、彼女とセックスしまくって、その先に何がある」
「いい大学行っていい会社入っていい金もらって、何の意味があるのか」
「何かに夢中になれるやつが羨ましい」
「俺って何もないなぁ」
っていうような虚無感に襲われる人物が出てくるんですが、こういうセリフは一切しゃべりません。だから、たぶん学生時代にこういったことを感じてない人はやっぱりこの映画を見ても意味がわかんないし、つまらないだろうなぁと思います。
大体、高校生に限らず、 生きてる中で本当に自分にとって大事なことっていうのは人は隠したがるから口に出さないことがほとんどで、だからみんな人の心を知りたがろうとするわけで、つまらない映画は簡単に自分の心を説明しちゃうから興醒めするんです。
最後に
自分も学生の頃、虚無感だらけの人間でしたけど、生きてること自体に意味なんかないって気づくと、人生はちょっと楽になったり楽しめたりします。たとえば仕事で賞をもらったり新聞に載せてもらったりしても、あまり意味が感じられなくなってしまって、最後に行き着いたところは何か作ったり書いたりして、自分を表現して誰かと共有することだったりしました。ちょっと前の時代だったら、そうなるためにはそれで稼ぐ存在になるしか手段がなかったから、こうやってネットができてほんとによかったなあと思うんですよね。
っていうのが参考先のレビューにも書かれてるんで、時間のある方はどうぞ。
(参考)
映画評論家の町山さんの『桐島、部活やめるってよ』の解説が素晴らしかったので、全文書き起こしてみた。 - NAVER まとめ